アルミカセット型の中の色々な「方式」について

アルミカセット金型は簡易金型の中でメインストリームに位置づけられる方法です。
2022年に撤退してしまいましたが、「プロトラブズ」というアメリカの会社が積極的に採用していた製造法で、ご存じの方も多いかもしれません。
具体的には、モールドベース(金型の外枠部分)には鉄製のものを準備し、中の製品部のみをアルミで作成する金型製造法です。 アルミ部分のみ都度製作し、モールドベースは共用で使いまわすため製造する部分が小さく、大幅なコストダウンを計ることが出来ます。

アルミカセット型というのは、元々あった総アルミ金型方式(別記事)と鉄カセット金型の2つの方法の折衷案です。双方の弱点を補って作られた方式です。
総アルミ金型方式は加工速度が速く、結果として加工費は安くなりますがアルミ素材価格の高騰により思うほどのコストメリットが出ませんでした。鉄カセット金型は工作機の進歩でだいぶ安くなっていましたが、重さがネックになって現場で使いづらい方法でした。
軽量で使いやすく、加工コストも鉄と同等以下となるアルミカセット金型に注目が集まっていったわけです。

ところが、このアルミカセット型という方法にいくつかの流派があることをご存じでしょうか?
金型というのは毎回オリジナルで製作されるので、金型メーカーによって作り方は千差万別です。
しかし大きく分けると幾つかの流派に分かれており、これを知ることで簡易型への理解がもう一歩深まりますので今回はこれらアルミカセット金型の流派を紹介いたします。

まず、カセット型ではモールドベースを共用するのですが、共用するモールドベースについて多くの金型メーカー間で合意された基準がありません。
その中のアルミカセットの形状(丸か四角か)、スライドを構造として考慮するか置きゴマで逃げるか、突き出し部は一体化するか都度組み立てるかなど、幾つかの選択肢ごとに作り方に流派が存在します。

【カセットのカタチ、丸か四角か】

モールドベースに取り付けるカセットの形状ですが、丸タイプと四角タイプの2種類が存在しています。丸タイプはどの方向から取り付けてもピッタリモールドベースと勘合できる反面で、方向が確定できないことから方向性がある部品には使えません。
ギアやプーリーなどの小さくて方向性がない部品には丸タイプが多く使用されます。勘合しやすくカセットが安価に作り易い為です。
一方で箱型の外装や方向のある機構部品などには四角タイプが使用されます。方向性が必要になる場合、丸タイプはスペースの観点から無駄が多くなるので。
市場の多数派は四角タイプだと言えるでしょう。四角タイプの方が様々な部品に合わせやすいという汎用性が高いためです。ですがギアやプーリーなど、方向性がない丸形状の部品では今でも円形カセット型が主流として使われています。
当社(テクノラボ)も話題となったプロトラブズ社も共に汎用性の高い四角タイプを採用しています。

【スライド構造を取るか、置きゴマにするか】

本金型では、製品にアンダーカット形状がある場合スライドや傾斜ピンという構造を作って金型の開閉に従ってアンダーカット形状が回避させます。こうしたスライド等の構造は金型の大きなコストアップ要因となります。また簡易金型でこれらの構造を作る事は、簡単ではありません。
そこでスライドや傾斜ピンの代わりに、抜き差し出来る駒構造(置きゴマ)を準備することでアンダーカット形状に対応する方法が簡易型では良く取られます。
この置きゴマ構造は金型代を安く出来ますが、反面で現場にとても嫌がられます。量産時に人がついて成形せざるを得なくためです。またパーティングラインのような割り目が置きゴマ周辺に発生するため、外観的にも美しくないという欠点があります。

この点については簡易型メーカーでも方式は拮抗していると思います。
当社(テクノラボ)は置きゴマ式を採用しています。 なぜなら「定価」という価格体系を取っている関係から、スライド構造を取ると原価の変動が大きすぎてしまい、定価での価格設定が出来なくなるからです。
一方、撤退したプロトラブズ社はスライド構造を取っていました。当社でもプロトラブズ社の放棄した簡易型を幾つも引き受けましたが、スライド部分は大掛かりで複雑な構造をとっており、原価が見合わなかったのだろうと感じました(本金型とコストが変わらなくなってしまう)。

【部品タイプ(都度組み付け)か一体タイプ(事後抜き差し)か】

カセット金型のもう一つの違いとして、部品タイプと一体タイプという違いがあります。
部品タイプとは突き出しピンやスプルー、エジェクタプレートなどの部品を、成形する前に毎回モールドベースに取り付けを行い金型にしてから製造をする方法です。
一体タイプとはこうした金型部品が全て一体に組付けられている方法で、モールドベースを取り付けた後、自由に抜き差し出来る製造方法です。

部品タイプの簡易型は非常にコストを抑えることが出来ますが、毎回成形機からモールドベースを降ろして付け外しを行う必要があります。結果として段取りの手間が非常に多いので極小ロットの生産には向きません。
一体タイプはその逆にモールドベースを載せた後に、とっかえひっかえ金型を変えることが出来るので極小ロットの生産に適しています。その分カセットの原価は高くなりますし、技術ハードルも高くなります。

テクノラボでは、最も要求される数量は50~500個ロット程度だという実感を有しています。そこで部品タイプの簡易型はコスト償却が出来ないと考えて、一体タイプの簡易型を提供しています。
プロトラブズ社もテクノラボと同様一体タイプを採用していましたが、スライド部分については一体化できずに部品タイプにされていました。プロトラブズ社が撤退せざるを得なくなった理由の一つに、この組み合わせが不適当だったのではないかと当社は感じております。

【テクノラボのアルミカセットと採用の理由】

以上、アルミカセット金型の幾つかの構造差異とテクノラボの採用している方式についてご説明しました。
テクノラボは簡易型を20年間で4~500面起工してきましたが、多くは小型筐体の外装だったためにこのような簡易型の方式を選択するに至りました。
どの方式がベストとは言えませんが、小型のケースや外装に適した方法としては今のテクノラボのアルミカセット型の方式がベストだと思っています。

【アルミカセット型の耐久性とコストについて】

アルミカセット金型の耐久性は、テクノラボの方式を取る限り数千ショット(2~5千程度?)という実感を持っています。
もちろんギアやプーリーなどで使われる円形カセットはもう少し多く(5千~2万程度)、部品タイプのカセット型はもう少し少ないでしょう(数百~2千程度)。
各メーカーごとに形状ごとの得手不得手があるので、良く見極めて選定されると良いでしょう。


本来であれば、これらの簡易型方式も業界で幾つかに統一して、他社と共用した方がユーザーのためにも製造する側のためにもなるような気がしていますが、突出した簡易型メーカーが主導権を取れるようにならないと中々集約は進まないように思います。