共取り金型とは何か?

簡易金型でコストダウンという理想に向かって、多くの設計者や購買担当者が金型のコストダウンに励んでいると思いますが、実は簡易型と本金型の境界は結構あいまいだったりします。境界を曖昧にしている一番の元凶が「共取り金型」です。

共取り金型とは何か?

「共取り金型」とは、一つの金型の中にいくつかの部品を一緒に彫り込んで一緒に成形する金型製造方法です。この共取り金型を本金型と見るのか、簡易金型と見るのか、状況によって判断が変わるためです。


共取り金型とは、一つの金型の中にいくつもの部品形状を彫り込んで一緒に成形できるようにした金型のことです。鉄で作られているという側面から見れば本金型のようですが、1部品1金型で製造することを前提とする本金型の製作方法から見ると簡易型と言えます。
結局、(本金型として)常識的なセット取りの範囲であれば本金型と見做され、それ以上に多くの部品を詰め込んだ場合に簡易型と見做されるという特殊な位置づけの金型です。

本来金型はプラスチックの部品を大量生産するために編み出された製造方法なので、1部品1金型で製造することで品質と部品コストを下げています。逆に大量生産に至らない場合、部品数が増えるほど金型費は飛躍的に高くなってしまいます。そうなると生産数が少ない部品は初期費用を償却できません。1つの部品だけで成立する製品はほとんど存在しないので、これは由々しき問題です。そこで登場するのがこの共取り金型という訳です。

本金型でもより大量に生産する場合、2個取り、4個取り、8個取りという風に金型の中に彫り込む形状を増やしてゆくことは頻繁に行われています。使い捨ての大量生産品に小さな数字が刻印されているのを見たことはありませんか?これは同じ部品を一つの金型に沢山彫り込んだ時に、どの彫り込みか製造現場が分かるようにするための目印なのです。
同じ部品であれば、かかる圧力が同じですから多数の製品を一緒に製造しても金型にかかる負荷は一定です。製造上のトラブルも起きづらいですし、金型の傷みもあまり発生しません。

上下ケースなどの「ほぼ同じくらい」のサイズの部品を一つの金型に一緒に彫り込んだ場合、これも多数個取りと同じように金型の傷みはそれほど起きないと金型メーカーは考えます。これが共取り金型の基本です。
とは言えそこに大きさの異なる別部品を一緒に彫り込むと、金型にかかる負担は一気に跳ね上がります。例えばプラスチック部品に良く使用されるABS材料の場合、400KG/cm2の充填圧力を加えることが推奨されます。大きさが異なる部品が同じ金型面にあると、面積の差だけ圧力差が生じる訳です。如何に剛性が高い鉄といえど、これだけの圧力がかかった上で何回も生産を繰り返すと変形や摩耗が発生します。そのような訳で、様々な部品を一緒に彫り込むことは金型メーカー的には禁忌されるのです。

共取り金型の考え方によれば、大きさの異なる複数部品を一つの金型で作る事が可能です。1部品1金型の原則を破って、多部品1金型で部品製造することで金型費を大幅に削減することが出来るのが、「共取り金型」の魅力です。複数部品を全て一つの金型に入れ込み金型数を減らせれば、一つの金型が多少高額となってもトータルで金型費は安く抑えることが可能なのです。
安く金型を作って貰っている製造者は、知らないうちにこの「共取り型」の恩恵にあずかっているのかも知れません。ちゃんと鉄を切削して製作しているので、金型メーカーは「本金型」と言っているかも知れません。

共取り金型はどこから「簡易型」なのか?

しかしどこから「共取り金型」を「簡易型」と呼ぶのでしょうか? 
結論として、金型の耐久性が半分以下(5万ショット以下)になるレベルから簡易型と呼べると考えています。イメージ的にはほぼ同じ大きさの上下ケースを一緒に作る場合は「本金型」、ボタンや機構部品などの倍以上大きさが異なるものを一緒に作る場合は「簡易金型」と考えるのが妥当だと思います。

なおプラモデルはゲートで多くの部品をつなげて、あたかも1つの部品のように作っています。多くの異なるサイズの部品を一緒に作っていながら圧力のばらつきも少ない。これは上手い考え方です。
でもプラモデルのような金型設計ノウハウはとても難しく、シミュレーションソフトも使えません。また寸法公差も保証できないので、実際にはほとんど使われることがないのが実情です。

さて、テクノラボは簡易型の専門メーカーなので簡易型の見積もりをお出しすることが多いのですが、ごく偶にお客様から「簡易型にしてもあまり本金型より安くならないのですね」と言われることがあります。
こうした場合、ほぼ9割以上の確率で「本金型」だとお客様が考えている金型が「共取り金型」という簡易型だったということがあります。

結局、本金型と簡易金型という上辺の言葉に踊らされることなく、最も自社に適切な金型を選ぶことが大切なのだという事になるのでしょう。テクノラボがあえて「簡易型の専門メーカー」という言葉を使っているのは、オーバースペックな金型を選ばない為に適切な種類の金型を選びましょう!ということを伝えたい為だとご理解ください。
さて、少し話が本筋から逸れてしまいました。

共取り金型のメリットとデメリット

こうしたお話から気づいたと思いますが、「共取り金型」は初期費用のコストダウンのためにはとても優れた金型製造方法なのです。
耐久性が下がるとは言え、数万個(本金型の基本製造保証数は10万個)以上の製造が可能で複数部品を一緒に製造することが出来、トータルの初期費用を大幅に抑えることが出来るのですから。
テクノラボでは特に部品点数が多く、部品の大きさが小さい時(サイズのばらつきの多さによる金型負荷の差が小さい時)、この共取り金型をお勧めすることが多いです。

営業的には「花のある」簡易型をお勧めした方が良いのかも知れませんが、結局はトータルコストを下げることが重要なので、長い目でみて信頼してもらう為にこのような対応を取っています。
テクノラボは簡易型のスペシャリストだと思ったのに「本金型」を勧められたとガッカリされるお客さまもいらっしゃるのですが、「共取り金型もカンイガタですから~!」と思いつつお話をさせていただいています。

共取り金型の優れた点をご紹介しましたが、これも決して万能な金型ではありません。
この金型の欠点は、特に大きさが異なる部品を一緒に製作する際に起こります。
大きな部品と小さな部品を一緒に製造しようとすると、大きな部品へ供給する樹脂が不十分になる反面、小さな部品には樹脂が過剰に充填されてしまいます。
これは共取り金型の寿命を本金型より大幅に縮める原因であると同時に、製造現場で不良が多発する原因でもあります。
実際に生産に入ったら品質が安定せず生産が始まらないけれど、理由が何故か分からないというお客様に良くお会いします。結構な率でこの共取り金型が原因の事があったりします。

全般に言える事ですが、製造リスクを金型ではなくて生産側に転嫁しているのが簡易型です。
だから簡易型は難しいですし、テクノラボが簡易金型のプロフェッショナルと主張する意義があると思っています。この点は簡易型を利用するお客さまには良く知っておいてほしい点です。

まとめ

最後に、共取り金型について整理します。
共取り金型は複数の部品を一つの金型で一緒に生産できるようにする方法です。
金型費を大幅に抑えることが出来ますが、その分製造時に生産リスクが高くなる方法でもありますし、金型の保証耐久性はかなり低くなります。鉄で製作しているので、一見すると本金型に見えますが実態は簡易型の一類型と言えます。

しかし良く考えるとココが最も大きなリスクなのです。
金型の耐久性はショット数に依存します。ゲート切り替えして1回で済む製造を2回にする時、金型の寿命は半分になります。つまり金型の償却コストが倍になります。
そして生産のコストも倍になります。当たり前ですが1回で生産できるものを2回で生産する訳ですから。つまりトータルのコストが、イメージとして4倍になるのです。
もし上手く生産が出来ない時に、部品原価が4倍になると聞いて素直に喜べますか?
「それは金型を作ったヤツの責任だからオレは知らない」とおっしゃる方もいるのは分かります。
しかし製造メーカーが「割に合わないから辞退します」と言い始めたら、結局強制する権力は依頼者にはありません。
他の誰かに金型を移管した時、元々生産者が提示してくれた値段で誰も請け負ってくれなくなったら、困りますね。
日本の多くのメーカーはプロトラブズ社の撤退時にこの問題点に改めて直面しました。
自社専用の金型で部品製造をする時、結局発注者は製造原価のリスクを自社で負わざるをえないので、金型が有するリスクについては事前に良く知っておく必要があるのです。

如何でしょうか?参考になりましたか?
それでは!