技術開発

開発者インタビュー

海洋プラ材料のインテリア雑貨「buøy (ブイ)」。海の今を伝えるアップサイクル工芸品を目指して

昨年冬のクラウドファンディング開始から半年、コロナ流行におけるビーチクリーンの中止や作業中断を乗り越え、無事リターン品の発送が完了しました。次のステージとしてreBirth改めbuoyという新たなブランド名で一般販売がスタートします。海洋ゴミの今を伝えるbuoyのデザインに込めた思いをまとめました。

プロダクトデザイナー田所沙弓

■プラスチックメーカーとしての挑戦。環境問題を考えながらプラスチック製品を考える

・海洋ゴミのリサイクルだから出来る表現

普段プラスチック製品のプロダクトデザインをしていますが、材料は同じプラスチックでも全く新しい挑戦となりました。製品コンセプトやデザインを考える上でもプラスチックの特徴(魅力)ってなんだろうと常に考えながら進めています。通常のリサイクルでないプラスチック材料と比べると品質や安定性の点では、海洋ゴミのリサイクル材は勝負になりません。それなら、バージン材(リサイクルでない材料)には出来ない表現、リサイクル前の色を活かした製品にしようという事で製作技法を開発してきました。

ペットボトルキャップから作ったトレイ

・作り手のメリットだけでなく、ユーザーのメリットに目を向けたプラスチック素材の活かし方

通常プラスチックのデザイン設計というと量産性を優先して考慮していきます。しかし、現代は20~30年前のような大量生産を前提とした開発は時代のニーズにあっていないなと感じてきました。みんなが使っているけどそこまで欲しくもないものよりも、(みんなは必要ないかもしれないけど)個々のニーズに合った使いやすくて欲しいものを開発していくことが環境問題を配慮したうえでプラスチック製品の開発には必要なのではないでしょうか。

buoyにおいてもその考えを念頭に作っています。「プラスチックの成型誤差は±コンマいくつ」といった考えや「ショート(欠け)があったら即不良品」といった品質基準や固定概念はいったん捨てて、ユーザーがそれを個性と感じ「欲しい」と思ってくれるのであれば、それでいいと考えています。プラスチックの魅力は大量に同じものが安くつくれることだけではない。割れにくくて水にも強く、繰り返し使え、発色もいい。そういったユーザー側のメリットに目を向けて長く大切にされるプロダクトを作っていきたいです。

「異なること」は不良か、個性か

■ビーチクリーンでの気づきを活かして

・綺麗な写真には写らない海の現実を知らせたい

海洋プラスチックの問題の話題は前々から気にはなっていましたが、私自身正直どこか遠い場所の問題のように感じていました。地元神奈川の海岸に遊びに行ったとしても、見るのは海と空ばかり。カメラのファインダーから美しい景色だけを見ていました。いざ海洋プラ問題に目を向けようと決意してから海岸に行くとびっくりするくらいゴミが目に入ります。マイクロプラスチックがたくさん混じったカラフルな砂浜を前に、なんで今まで気づかなかったのだろうと悲しくなると同時に怖くなりました。

私のように海の現状に気づいていない人がたくさんいると思います。そういった人の心に響くような活動にしたいと強く思いました。

・劣化したり、細かくなってしまったプラスチック。全てまとめて成形

私が清掃にいく海岸ではペットボトルのボトル以外のプラスチックは、全て「埋め立てゴミ」として回収されます。海水にさらされていたプラスチックは劣化していますし、プラスチックの種類ごとに分別することは時間と手間がかかる。たとえ分類したとしても、マテリアルリサイクルとしてすべて活用することは現実的に容易ではありません。埋め立てゴミとして燃やされてしまうのであれば、プラスチックをひとまとめに成形する技術を確立することで、そのときに集まった材料分布を閉じ込めることができるのではと思いました。

昨年末開催したクラウドファンディングでは、募集前とリターン品で製品の雰囲気が少し変わっています。

 

buoyのアップ画像

混ぜ物なしの海洋ゴミが織りなす模様

異なる温度で溶けるプラスチックを一体化させるにはバージン材をつなぎとして混ぜる必要があるとプロジェクト開始前は思いこんでいましたが、技術者の検討によりつなぎ無しで成形できるようになったからです。

今回ECショップに並んでいる製品は表面のフィルム以外全て海洋ゴミだけで成形しています。

つなぎをなくすことで、掌に感じる重さが回収された海洋ゴミの重さにすることができました。

海洋ゴミを部屋に置いてもいいと思わせるデザインに。海洋ゴミだから買うのではなく、『使いたい』と思って購入してほしい

社内でも、「ゴミの原型を最大限残すべきではないか」という声と「海洋ゴミということを抜きにしても欲しいデザインにすべきでは」との両方の意見がありました。

もちろんできる限り海の現状を伝えるアイテムとしては、ゴミの原型や汚れ、劣化がわかったほうがショッキングなものができあがります。

でも今回のbuoyでは海洋ゴミという背景を抜きにしても欲しいと思わせるアイテムを目指して作りこんできました。なぜならまだまだ街には海洋ゴミはどこか遠い場所の問題と考えている人が多いからです。そんな人たちに海洋ゴミの問題を肌で感じてほしい、気づいてほしい。そのきっかけを与えるアイテムにしたかったので海洋ゴミ問題に興味がない人でも手に取りたくなるデザインを目指してきました。

『海洋ゴミだから買う』『みんなが買っているから買う』のではなく、プロダクトとして“気に入って”購入を決めてほしい。材料となっているプラスチックがかつて捨てられていたゴミだからこそ、記念品として一時のものではなく実際に部屋を彩るアイテムとして使うことを前提に購入を決めてほしいと思っています。

buoyの使用シーン

小物入れなどインテリアアイテムとしてお使いください。

buøy(ブイ)
海洋ゴミを材料にしたプロダクトブランド。プラスチックメーカーの有志によって技術開発し、クラウドファンディングを経て製品化。海洋ゴミのように劣化しプラスチックの種類がわからない状態でも成型する技術において特許出願中。2020年7月よりreBirth改めbuøyとして一般販売を開始した。
[サイト]  https://www.techno-labo.com/rebirth
[facebook] https://www.facebook.com/plastech.project/
[instagram] https://www.instagram.com/plas_tech/
[クラウドファンディングページ] https://camp-fire.jp/projects/view/209060

<お問い合わせ先>
〒221-0057 神奈川県横浜市神奈川区青木町6-19マークレジデンス1B
株式会社テクノラボ buoy事業部
mail: buoy@techno-labo.com

 

 

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